世界が抱える問題描く『レ・ミゼラブル』は「小さな屈辱や嫌がらせの積み重なり」シンポジウム開催

ラジ・リ監督作『レ・ミゼラブル』の公開記念として、シンポジウム付特別試写会が2月11日に開催。森千香子(同志社大学社会学部・教授)、望月優大(ライター、ニッポン複雑紀行編集長)、安田菜津紀(フォトジャーナリスト)が登壇し意見交換を行った。

移民や低所得者が多く住む危険な犯罪地域と化す、小説「レ・ミゼラブル」にも登場するモンフェルメイユを舞台に、世界中で起きている移民、貧困、分断、格差などを描く本作。近年では『家族を想うとき』、『ジョーカー』、『パラサイト 半地下の家族』など、世界中の映画監督たちがその現状を描き、警鐘を鳴らしている。

今回行われたシンポジウムでは、まず森さんが「フランスでは“郊外映画″というジャンルがあるくらい郊外で映画はよく作られていますが、それらと大きく違うのがこのタイトル」と言い、「ユゴーが描いた19世紀と2世紀後の現在がどう変化したのか、していないのかを描いています。本作は単に移民を描いた作品ではなく、『レ・ミゼラブル』とは哀れな人々、貧しい人々という意味ですが、移民社会を描きながら、フランスの19世紀から脈々と続いている伝統を映し出した素晴らしい映画だと思います」と感想を述べる。

望月さんは「監督がこの街で暮らしているということが、一つの特徴」と話し、「フランス以外から来た人達が、本質的に危険で、劣っていて、ずっと貧しくあってしかるべき、という描き方をしていない。子供や女性たちの明るい日常、生活の生き生きしたシーンがある。そして、最後のシーン、ある種の爆発が起きるまでの経過をしっかりと描いている。なんで、そうなってしまうのか。ムスリム同胞団のボス、サラが語った『怒りは避けられない』という言葉があった。なぜ、避けられないのか。警察的な暴力的に扱いが背景にあるわけですが、なぜあのような結末になってしまうのか。なぜ、他の落とし前がつけられなくなったのか。そこがきちんと描かれていたのが良かったです」と評価。

また、中東のシリアやイラク、紛争の続いている地域で取材を行う安田さんは「そこからヨーロッパ、フランスに向けて難民として渡った人達がいる。その一方で、フランスからイスラム国に参加した女性たちに取材したことがあります。なぜ、そういう行き来があるのかを、私はつかめずにいました。この映画が全てとは言いませんが、何にせめぎ合い、どんな葛藤があって彼女たち、彼らがそうしたのか。抱えていた何か、その一端をこの映画で観られたような気がしました」と話した。

フランスの郊外だけではなく、世界中で起きている移民問題と貧困から生まれる分断と格差。これについて望月さんは「理由と歴史と経緯があってそこにいる、ということを考えるべき」と強調し、「移民という言葉は、貧しい国から裕福な国に稼ぎに来た、自由意思で来ているからきつくても仕方ないという目線がある。ただ、受け入れ国側が在留資格などを開けたり、閉めたりして呼んできてもいる。そこに住み、働くかにも政策的な意図があり、こういう結果がある。映画の中で(少年が)ケガをした理由を(警官が)『転んだからと言え』という全部自分が悪かったと言えというシーンがあります。『お前のせいだ』と移民に押し付けていく社会のまなざしを、この映画は描いています。ここからどう離れられるかが、移民を語る上で重要なテーマです」と示す。

そして「この映画をみて、さすがに日本では、ここまでの熾烈な暴力や衝突せめぎ合いは起きないと思われたのではないでしょうか」と呼びかけた安田さん。「私は果たしてそうだろうかと思っています」と言い、「例えば、いま新型のコロナウィルスのニュースが駆け巡っています。感染症など人が怖いというものに対して、必ず外国人が悪いことをしているという陰謀論がおきます。特定の国籍や民族を名指しして犯罪をしている噂が回ってしますことがある。自然災害でも。まさか、自分たちのコミュニティの人間がやらないはずだという想いが裏側にある。これは放っておくと、いずれは身体的な暴力に発展するものだと思います」と日本でも起きうる可能性もあると指摘した。

一方、来場者から“現実をどれだけ反映しているのか”という疑問が投げかけられると、森さんは「最後に警察との対立から暴動が起きますが、それは実際に起きています。1990年代には340件以上の対立、暴動が警察によって記録されています。それが日常的に起きているかというと、そうではありません」とコメント。

「この映画でよく描かれていることのひとつは、内部の人々の結束の強さ」と言う森さん。以前、別の団地で自身の携帯を落とした経験をふり返り、「知っている人の連絡先がたくさん入っているということから、色々な繋がりによって、携帯が出てきたのです。その繋がりはよい意味での結束でもありますが、少年のイッサがいじめられた時は、仕返しに行くという形で非行に繋がることもあるわけです。監督が経験した現実を反映していることは確かですが、365日の全てではない。ただ言えることは、映画の中に出てくる警察の身体検査のシーンがありました。私自身も身体検査を受けたことがありますが、日本人の私からしますと、こんなことを秩序を守る警官がするのかという屈辱的な扱いを受けました。そういう小さな屈辱や嫌がらせの積み重なり。それがこの映画で描かれた事実だと思います」と語った。

そんな様々な問題を映し出す本作で、果たして解決への希望はあるのだろうか? 

望月さんは「イエローベストの運動ともつながりを感じています。『レ・ミゼラブル』いわゆる惨めな人々という言葉を、他者ととらえるのか、自分たちと捉えるのか。この映画を他者の物語とみるのか、自分の物語と見られるのか。それが、その後に変化を起こしていく主体となれるかの需要な契機であると思うのです。イエローベスト運動に普通のフランス人が路上で声を上げていることとのつながりを少し感じています。あの運動が成功しているかどうかは疑問ではありますが、そこに希望があるように思えます」と話し、安田さんは「こういう映画を観た時に、こういう暴動が起きるのではないかと聞かれることがあります。そういう時に『本当に?』と一度エクスキューズを持つことが大切です」「テロや暴動など、今の恐怖にとらわれると視野は狭まっていきがちです。そういう時ほど、過去を振り返ってみると、もうそこにヒントがあり、答えの一つがあったりする。希望と考えると、もうそこにあるよということでしょうか」と一度立ち止まることが大切だという。

森さんは「この映画のラストシーンをどう考えていいのかわかりません。まだ考えは定まっていませんが、ある種の希望であると思っています。怒りです。不当な扱い受けたことに対して、まだ怒りをはく奪されていない若者が声をあげる。それはすごく大きいことだと思っています」「自分にも同じ権利があるのだという怒りを忘れないこと。それがこの映画の強烈なメッセージではないのかと、私自身は見ています」と話していた。

『レ・ミゼラブル』は2月28日(金)より新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。

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