“赤ちゃん自身のためになるものを”目指して テレビの常識を度外視した『シナぷしゅ』がGUとコラボできたワケ

ファストファッションブランド「GU(ジーユー)」のベビーコレクション「GU baby」は今月3日、テレビ東京の赤ちゃん向け番組『シナぷしゅ』(月〜金 前7:35)とコラボレーションした新しいベビー服を発表。同時にオンラインストアで販売を開始したところ、2時間ほどで先行販売分は完売したという。その後、11日より全国のジーユー店舗およびオンラインストアでも販売を始めると、予想を上回るペースで売り切れが続出した。このコラボはいかにして生まれたのか。『シナぷしゅ』を企画したテレビ東京制作局コンテンツ統括プロデューサー・飯田佳奈子さん(32)に話を聞いた。

あまりの反響の大きさに飯田さんは、「ママさんたちの口コミの拡散力は強い。ありがたい限りです」と驚きつつも、「一年近く準備してきたものなので感無量です。たくさんのこどもたちの、宝物の一着になることを願っています」と、安堵の笑みを浮かべながら取材に応じてくれた。

今回、「GU baby」で発売された『シナぷしゅ』コラボ商品は、<シナぷしゅジユウT(税込1290円)>と<ぷしゅポッケサマナルパンツ(税込990円)>の2種と、ママ・パパも一緒に楽しめる大人向けのユニセックス商品<シナぷしゅジユウT(税込1690円)>。「大きなボタン、いろんな形のポケット、その中のカラフルな刺繍、前後反対に着ても正解なデザイン、かくれんぼしているぷしゅぷしゅ…こだわりをこれでもか!と詰め込んだ」(飯田さん)という【妥協しないものづくり】と【GUらしいお手頃価格】を実現させた、まさに奇跡のようなコラボ商品だ。

ベビー服にもファッション性、実用性、安心の品質、低価格を求め、今年2月22日にデビューした「GU baby」。開発の段階で、「もっと赤ちゃん自身のためのベビー服を作りたい」と考えていたところ、目に止まったのが2020年4月からレギュラー放送・配信が始まった『シナぷしゅ』だった。

同番組は、2019年12月にトライアル放送した反響を受けて、翌年4月にレギュラー化された気鋭の番組。メインターゲットを0歳〜2歳児とした、民放初の赤ちゃん向け番組で、東京大学赤ちゃんラボの開一夫教授の監修のもと、徹底した赤ちゃん目線で制作されている。番組名の由来となっている「シナプス」は、脳の神経細胞と神経細胞のつなぎ目のことで、赤ちゃんの発達に欠かせないもの。赤ちゃんたちの感性を育む多種多様、かつ適切な刺激を与えるコンテンツを作って放送、ネットでも配信している。

「GUが『シナぷしゅ』に興味を持ってくださっているという話を聞きつけて、であればなんとしても1回プレゼンさせてほしい、と私1人でジーユー本社に乗り込んでいきました(笑)。その時は番組もレギュラー放送が始まったばかりで、GUのようなビッグネームとコラボできるとは思っていなかったんですが、とりあえず話を聞いてもらうことが大事だと思って。番組づくりへの思いをプレゼンさせていただきました。新たにベビーコレクションを立ち上げるタイミングのGUと、新番組の『シナぷしゅ』、ファッションとテレビ、ジャンルは違えど、新しいもの同士、“赤ちゃん自身のためになるものを”目指している点でも共感し合うことができて実現したコラボだったと思います。ポケットの内側に刺繍をするなど、GU側が限界を超えた挑戦をしてくれ、キャラクターをプリントするだけのコラボではなく、作り手側の意図が伝わるコラボ商品が実現できてよかった、と思っています」(飯田さん)

■テレビ局をとりまく環境の変化が追い風に?

GUのベビーコレクションの立ち上げと、『シナぷしゅ』のレギュラー化のタイミングが重なったのは偶然だけれども、望ましいと思っている出来事が起きる可能性を高めるために、日常的に行動していたのであれば、最初の情報をキャッチできたのも、結果、コラボ商品が実現したのも必然。飯田さんは、「番組をつくるだけでは終わらない何かを当初から考えていた」という。

「番組の企画書には、メインのターゲット層や番組で扱う内容を書くものなんですが、私が最初に作った企画書には、放送ではこんなことをやります、配信ではこういうことをやります、商品化はこれぐらいの展開が予想されます、それ以外にもこういうビジネスが考えられます、社会のこういうニーズにも応えられます、みたいなコンテンツビジネスの企画書に近いものだったと思います。

そもそも赤ちゃん向けの番組の企画を立てたのは、自分が出産を経験したことにあります。自分がこどもを産んで初めて、いままで“こども向け”だと思っていたものへの疑問が湧いてきました。赤ちゃんにテレビは見せない方がいい、と思われている一方で、スマホでは玉石混交の動画を見せている現状…。赤ちゃん向けのコンテンツがキー局で全く選択肢としてなくて、NHKのEテレ一択という状況も妙だな、と思いました。赤ちゃんだって社会の一員なんだからもっと選択肢があってもいいのに…という課題に気づけたんです」

たしかに、半世紀以上のテレビの歴史の中で、『シナぷしゅ』が赤ちゃん向け番組としては“民放初”だったんだ…という驚きもある。

「そもそも個人視聴率調査は、世帯内の満4歳以上の家族を対象としているので、0〜2歳児は対象外。つまり、0〜2歳児向けに番組作るということは、視聴率は0%でいいですと言っているようなものなので、テレビ局のこれまでのビジネススタイルでいくと絶対にありえないし、テレビ東京だとしても10年前ではありえない企画だったかもしれません。やはりテレビ局のビジネスモデルがここ数年で激しく変化している中で、『シナぷしゅ』は成立したんだろうな、と思います。タイミングに恵まれたというのがあると思います」(飯田さん)

テレビ局をとりまく環境が激変している中で、テレビ東京は放送外のビジネスに積極的に取り組んでいると言われている。『シナぷしゅ』では、「GU baby」とコラボする前に、絵本やシールブックを発売。今後も放送・配信にとどまらない展開が期待される。

「初めて絵本を出した時に思ったんですが、赤ちゃんにとって、普段テレビで見ているものが、実際に目の前にあって、自分で触ることができると、すごくうれしいみたい。今回のコラボTシャツも、ポケットの中に刺繍された番組キャラクターの《ぷしゅぷしゅ》を見つけた時の反応がすごくいいな、と実感しました。手で触って実感したことは記憶や体に残ると言われていますので、赤ちゃん向けのコンテンツだからこそ、映像だけではなく、日常生活に寄り添えるようなモノへの展開は、今後どんどんやっていけたらいいな、と思いました」(飯田さん)

「GU baby」とのコラボをきっかけに、衣食住の「衣」からはじまる“服育”というテーマを新たに見いだせたことも収穫だったという。

「食育みたいなイメージで、衣服も毎日の生活で欠かせないもの。そこに少し思いを馳せることでより日常が豊かになる。こどもにとって、きょう、何を着るかは立派な自己表現の一つだと思うんです。小さなこどもでも、きょうはこれがいいとか、これはいやだとか、気分によるんでしょうけど、そういうことが日常的にあると思うんです。今回のコラボTシャツでは、ポケットの中の刺繍から想像力を掻き立てたり、ボタンを自分で外して『自分でできた』という達成感を味わったり、前後どちらでも着られるデザインにして、こどものお着替えを肯定してあげたり、服を通してできること、服育の観点からコンテンツをつくるのも面白いな、と思いました」

YouTubeのチャンネル登録者も右肩あがりで、8万人を突破。乳幼児がいる家庭では、「ママたちの口コミ」でかなり番組の存在も浸透してきているようだ。潜在的な需要がありながら、これまで誰も手を付けなかったところで、キラリと光る鉱脈を見つけたとも言える。

「インスタグラムのフォロワー数など数字で実感できることもありますが、日常の中でこどもと公園に遊びんでいたら、よその家の子が『シナぷしゅ』の歌を歌っていたり、親御さん同士が番組の話をしていたり、そういう実生活レベルで手応えを実感しています。私が最初に企画書を書いた時、息子はまだ1歳になりたてだったんですが、そんな息子ももう3歳。『シナぷしゅ』を卒業していく年齢です。常に『シナぷしゅ』の視聴者はフレッシュ。どんどん生まれて成長して、入れ替わっていく。SNSでのコミュニケーションを生かしながら、今、『シナぷしゅ』を見ていただいている親御さんの意見に耳を傾けながら、常に赤ちゃんのニーズに沿った番組をブレずにやっていきたいと思ってます」。

■シナぷしゅ×GU baby特設サイト
https://www.gu-global.com/jp/ja/feature/collaboration/kids/

■スペシャルコンテンツを公開中

「GU baby」と『シナぷしゅ』のコラボ商品と連動し、実際に服を着ながら楽しめる動画や、服の成り立ちを学べる動画などの合計5本のスペシャルコンテンツも制作。「シナぷしゅ」 の公式You Tube「シナぷしゅch」で公開している。

●『ジユウたいそう”GU”バージョン』
番組で大人気の「ジユウたいそう」ジーユー特別バージョン。サマナルパンツを着用しジユウたいそうをすることで、さまざまな体の動きを促す。
https://youtu.be/tn0JDFPm5dQ
制作協力:spoon

●『つむぎちゃんのおようふく』
コットンからお洋服ができるまでを描いた、親子で楽しみながら学べるデジタル絵本。
https://www.gu-global.com/jp/ja/feature/collaboration/ehon/
さく:名取祐一郎

●『ポケットこうしんきょく』
ポケットの中に広がる世界を描き、 想像と夢が膨らむカラフルなアニメーション。
https://youtu.be/OjpLeCA_ewE
さく:清水貴栄

●『ぼたんのたび』
ボタンがひとつ。 コロコロころがって、 冒険に出る映像。 どんな旅をして、 何になるのか、 想像力を掻き立てます。
https://youtu.be/Nl-sDfmkuDw
ディレクター:丸山恵(テレビ東京)

●『おなじとちがう』
https://youtu.be/LHoIEbQm8yc
リズムに合わせてくらべっこして、 同じデザインと違うデザインを発見する映像。
さく:Ena Kakuta

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“赤ちゃん自身のためになるものを”目指して テレビの常識を度外視した『シナぷしゅ』がGUとコラボできたワケ