平和を希求する音楽が響きわたり、私たちは声をあげ続ける。『全感覚祭 presents No War 0305』は終わらない。

長崎に住んでいた父方の祖父母は、夜でも明かりをつけず、湿気が首にまとわりつく日もカーテンで窓を覆ったまま過ごしていた。第二次世界大戦に巻き込まれた幼少時の身を守るための習慣が未だに抜けないのだと吐露していた。20年以上前、『バトル・ロワイアル』に熱中し、レイティングゆえに実写版映画を観に行けないことに不満を漏らす私の姿に、母方の祖父は「子供たちが殺し合いをするところなんて、たとえフィクションでも見たくない」と寂しげな表情で零した。彼らはもうこの世にいない。だが、今でも「戦争反対」と声高に主張しなければ失われてしまうものが無数にある。2022年3月5日、GEZANが主宰するレーベル十三月がJR新宿駅南口で『全感覚祭 presents No War 0305』を決行した。アーティストのライヴとさまざまなバックグラウンドを持つ人々のスピーチのマイクリレーでつながった約5時間半のデモ活動に1万人以上が集結し、YouTube視聴者数は4000人を超えたという。「戦争反対」。わざわざ表に出すまでもないとすら思っていたその意志を、改めて掘り起こして掲げることに戸惑っていた人々のために、やり場のない怒りと悲しみを持て余していた人々のために、声をあげる時間と場所を作ってくれてありがとう。そして次は私たちの番。

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